皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3層に分かれます。
わきが・多汗症の手術では、剪除法、クアドラカット法に限らず、皮下組織にある付属器(毛根、アポクリン腺、エクリン腺など)の層を除去します。その際、真皮下血管網や皮脂腺はできるだけ残します。前者を取りすぎると皮膚の血行が悪くなり、後者を取りすぎると後々毛穴のつまりを起こし、膿皮症や粉瘤の原因となります。
エクリン腺はコリン作動性でアポクリン腺はアドレナリン、コリン作動性の2支配をうけています。アポクリン腺はエクリン腺より深い位置にあり、アポクリン腺群の皮膚表面からの距離は平均5mm程度です。つまり皮膚表面から7~8mmの厚さで層状に切除すればよいということになります。
多汗症の場合、この検査で発汗エリアがわかるので、取り残しや取り過ぎのない精確な手術をすることができます。腋臭のみで多汗症のない場合は腋毛を参考に範囲を決めます。
下記の切開になることが多い。
丸に近いと1本切開
横長だと2本切開
皮膚をひっくり返すと大量のアポクリン腺(茶褐色の粒々)が見えます。「スジコ状」とたとえます。「イクラ」のように1つ1つ取るのではなく、塊(スジコ)としてハサミで切除していきます。
汗腺層を切除し終わったところ。
真皮下血管網や皮脂腺(黄色い粒々)を残すことが重要。
↓患者さまのご了解を得て動画を公開します(2010.4.12)
取れた汗腺組織
2本切開では、中心が四角、両端が半円のシート(「スジコ」)として取れます。取りにくい場所では少しづつ切除(「イクラ」)することもあります。
縫合終了時。ドレーンという血抜きの管を挿入し、切開部の端に止めます。切開線以外にも皮膚が動かないように数カ所アンカーリング縫合をします(座布団の真ん中と同じです)。
どちらの手術でも血が溜まらないように圧迫が必要です。施設によって圧迫固定の方法は違いますが、当院では基本的に綿を縫い付けます(タイオーバー固定)。
さらにその上から弾性包帯で「たすきがけ」のように固定します。
下の写真は「経過良好な症例の術後3ヶ月目」です。2症例とも経過良好であり、全員がこのようになるとは限りません。色素沈着を残したり、ケロイドになる方もいます。腋毛はかなり薄くなります。特に中心ほど薄くなります。
合併症は比較的起こる軽度のもの(テープかぶれなど)から、極めて稀な重度のもの(巨大血腫など)まで様々です。これらについては、別にページを設けましたので、コチラをご参照下さい。
多汗症のひとは再度でんぷん検査をして術後の評価をします。左の女性は術前真っ黒に染まっていましたが、術後3ヶ月目の検査ではほとんど染まっていません。
それ以外のかたはVASという10cmの線が引かれたスケールを用いて、手術前と比べて今の症状はどれくらいか判断してもらいます。いわば患者さまが私たちにつける「成績表」です。
両端に5mmほどの切開のみ。範囲が小さい場合は切開が1ヶ所で済むこともあります。元々ワキにしわのある場合はしわを利用して手術することも可能です。
皮下剥離し、シェーバーを挿入したところ。まだ皮膚は厚く不均一なのがわかります。
「クアドラカット法はブラインドで取るので不安」という声をよく聞きますが、シェーバーを持ち上げるて薄く均一に取れているのが確認できます。上の写真と比べると透けるほど薄くなってるのがわかると思います。
↓患者様のご厚意により動画を公開します(2010.4.6)
クアドラカットでは、取れた汗腺はチューブを通ってビンの中に吸引されます。
クアドラカットではアンカーリングは不要なこともありますが、必要に応じて1,2ヶ所アンカーリングをすることもあります。ドレーンを挿入し、縫合します。
どちらの手術でも血が溜まらないように圧迫が必要です。施設によって圧迫固定の方法は違いますが、当院では基本的に綿を縫い付けます(タイオーバー固定)。
さらにその上から弾性包帯で「たすきがけ」のように固定します。
日常生活でご不安な患者さまには、「ガーメント」というナイロン素材の腋臭症手術専用にデザインされた固定着をお勧めしています。包帯が薄く済み、より楽に生活することができます(自己負担)。
クアドラカットの術後3ヶ月目です。ひきつれもなく、色素沈着はごく軽度ありますが、あと数ヶ月でさらに薄くなると予想されます。腋毛は薄くなりますが、剪除法と違って、中心部が薄くなるというより、まだらに薄くなる傾向があり、男性にとっても不自然さは少ないと思います。
クアドラカットは経過が早く、合併症も少ない優れた方法ですが、術後、特に当日の安静を守れないと血腫などを起こすことがあります。
多汗症のひとは再度でんぷん検査をして術後の評価をします。左の女性は術前真っ黒に染まっていましたが、術後3ヶ月目の検査ではほとんど染まっていません。
それ以外のかたはVASという10cmの線が引かれたスケールを用いて、手術前と比べて今の症状はどれくらいか判断してもらいます。いわば患者さまが私たちにつける「成績表」です。
クアドラカット術前
クアドラカット術後