他院でのワキガ治療後に治療結果に対し満足いかず、当院に再手術を希望され、来院される患者さんが増えています。当院で診察後に再手術をする場合、結果は以前の手術方法によって左右されます。以下におおまかに分けて4つの分類にわけてみました。
それぞれ手術方法と、当院での再手術術後の起こり得る効果について述べます。手術方法:皮下に残存しているだろう汗腺を瘢痕ごと刃のあるもので削り取り、摘出します。
効果が出づらい理由として、「残存しているだろう汗腺」は実はほとんど瘢痕化されておりあきらかな汗腺の塊が目視もしくは確認できないことが多いため摘出が困難となります。(それゆえ、初回の手術が重要となります)前医にて手術を施行されたのち皮下はかならず瘢痕化します。瘢痕化された組織は白色で皮膚側に癒着していることが多いです。そのため浅筋膜上にて再剥離し、その皮膚側を削り取っていきますが、瘢痕化したことにより厚みを増した皮膚を削るのに限界があり、また皮膚に迷入した汗腺を取ることは難しくなります。
仮に前医手術術前の臭いの状態を10とし、術後の臭いの状態が4と自己評価した場合、6割改善したことになります。多くの患者さんは、この残りの4の状態がさらに6割改善するだろうと期待しますが(ほとんどの症例で改善はしますが)、初回手術同様な減り方をすることは瘢痕の存在により困難となります。現実的に、我々ができることは前述した通り、残存した瘢痕をできるだけ削ることのみとなります。瘢痕組織が厚く、皮膚側に癒着の強いものは結果が得づらくなる傾向にあります。
皮下に瘢痕を認めます(白くなっている部分)。手術範囲は問題ありませんが、焼いているだけなので汗腺は除去できていません。比較的、広範囲に瘢痕が存在しています。
瘢痕ごと摘出します。瘢痕により汗腺を目視することはできません。
皮脂腺を残し、皮膚側の瘢痕の癒着がそれほど強くなかったためきれいに瘢痕が切除できています。
必要十分な範囲を手術しています。
ミラドライ術後は薄い瘢痕組織が比較的広範囲に広がっているのが特徴です。臭いの弱い方には効果があるかもしれませんが、アポクリン腺を摘出しているわけではないので、臭いの強い方にはほとんど効果がないと考えております。
手術方法:皮下に残存している本来切除すべき汗腺を摘出します。
前医にて手術を受けているものの、ほとんど変化がないといわれることがあります。その大多数が非常に小範囲しか手術をしていないとおもわれます(手術件数の効率をあげるために故意に手抜きをしているところもあります)。症例によっては抜糸すら必要なく、術後経過観察に来なくてもよいといわれることもあります。もともとすべき手術範囲を手術していないので再手術により満足のいく結果になることがほとんどです。
本来すべき手術範囲が外円で、実際前医(某美容皮膚科)にて手術された範囲が内円です。明らかに不十分です。因みに前医での手術時間は両側でたったの30分とのことでした。
まったく手つかずの状態のため通常の初回手術同様に汗腺がきれいに摘出できます。
術直後、きれいに摘出できています。
必要十分な範囲の汗腺を摘出できています。
手術方法:再手術しないこともありますが、まずは剪除法をおこなうことが多いです(症例3-1参照)。それでも改善を感じられない場合、症例によっては最終的に皮膚ごと摘出する場合もあります(症例3-2参照)
おおよそどこのクリニックで受けたかを聞けばどういったドクターがどのような手技で施術しているか予測できます。しっかりとした治療をおこなっているクリニックがオペをしたのちに、どこか腋臭がする症例を散見します。他院術後の場合、どのように考えたら良いのか非常に難しいですが、やはり非常に臭いの強い症例の場合、完治というものが基本に困難なものがあるのではないかと考えています。その理由として、皮膚側に汗腺がめり込んでいて剪除法もしくはクアドラカット法でも取れない、腋窩から乳輪につながるラインなど腋窩のみならず広い範囲にアポクリン腺が存在する、乳輪からの臭いが強く腋窩まで臭いが影響を及ぼしている、などなどが考えられますが、いずれにしても再手術により治療効果を出すのが非常に難しいです。また過去に複数回手術の既往がある症例はさらに結果が得づらくなります。瘢痕を削ること自体が難しいのみならず、瘢痕を削ったからといって結果が伴わない場合も十分考えられます。最終的に腋窩の皮膚すべてを摘出しW形成術を行うこともありますが、術後の傷、拘縮などからあまり推奨される方法ではないとかんがえています。
過去、他院(それぞれ異なるクリニック)にて複数回手術した症例です。瘢痕が厚くなっているのがわかります。
厚い瘢痕を皮膚側より削りとっていますが、瘢痕(白色の組織)しか確認できません。
過去、他院にて複数回手術した症例です。ご本人さまと数回の話し合いをおこない、皮膚切除に至った症例です。
広範囲の皮膚切除をおこないW形成術を施行しております。(右写真:術直後)
腋臭症術後に異なる疾患により新たな悩みが生じている場合です。
手術方法は症例によってまちまちのため各々以下に記載します。
手術方法:一つ一つ丁寧に摘出していきます。
小さい粉瘤が多発しています。摘出し丁寧に縫合しました。
手術方法:瘢痕部分を摘出し縫合処置します。
粉瘤が原因で何度も腫れて膿んだことがあるとのことです。その後ケロイド様の瘢痕となりました。
瘢痕部分を切除し縫合処置しました。
手術方法:瘢痕部分を摘出し縫合処置します。
他院(某美容外科)術後、数年たっているもかかわらず拘縮がとれず、また粉瘤が多発しており炎症を繰り返しているとのことでした。
拘縮をとるためW形成術をおこない、同時に粉瘤が多発している部分は皮膚ごと摘出しました。
いずれの場合も、再手術症例は結果が得づらいため、根気よく丁寧に、手術することが必要とかんがえています。