腋臭症・多汗症術後合併症ページ

腋臭症・多汗症術後合併症について
どのような手術においても効果がある反面ある程度のリスクはつきものです。特に腋臭症・多汗症の手術は、よい結果を出すために隅々まで切除する(手術範囲が広い)と、その分合併症の可能性が高くなります。逆に言えば、不十分な手術ほど、キズの治りは早く、リスクも少なく、瘢痕も目立たないのです。
合併症は、手術手技の問題というより、患者さまご自身の体質、安静度、セルフケアなどがより大きな要因となります。
手術を受けられるときは必ずそのリスクについても説明を受けご理解下さい。

術後合併症には術後早期に起こるものとキズが治ってから起こるものがあります。

①腫れ、痛み、感染など

一般的な手術後合併症のリスクは稀ですが有り得ます。当院の腋臭症手術後に化膿(膿瘍、蜂巣炎など)を起こした例は現在のところありません。
手術当日、麻酔が切れると痛みが出ますが、翌日にはほとんど落ち着きます。
包帯をきつめに巻きますので腕や手が若干むくむことがあります。

②テープかぶれ

直後の固定は最重要ですので粘着力の強いテープを使わざるを得ません。そのため本当に申し訳ないのですが、半分くらいの患者さまに起こります。翌日問題なければ肌に優しいものに変えます。


③出血、血腫 

剪除法術後の安静が不十分で動かして
しまったため血腫ができた症例。
翌日血腫除去手術を行い皮膚壊死を免れました。


同じ症例の術後4ヶ月。
血腫は完全になくなり、良好な状態です。


何よりも最も気を付けていただきたいのが、
出血→血腫→皮膚壊死→再手術
手術のときにドレーンという血を抜く管を入れますが、抜ききれないほど出血すると皮膚の下に血がたまってしまい「血腫」を作ります。ほとんどの場合は小さい血腫なので自然に吸収されるのを待ったり、針で穴を開けて押し出したりすれば解決できますが、稀に大きな血腫を作ることがあります。治療を躊躇すると皮膚壊死を起こし、再手術が必要になる可能性が出てきますので、早めに切開して血腫除去を行います。出血原因のほとんどが当日の安静不足です。

「子供を抱っこした」
「寝相が悪く、痛みで起きたら出血していた」
「雨が振ってきたので、いけないとは思いつつ洗濯物を取り込んだ」 というエピソードがあります。

2日目以降に出血することはほとんどありません。当日は脇を軽くしめ、肩を動かさないよう細心の注意を払って下さい。

④創し開(キズが開くこと)および皮膚壊死

キズが部分的に開きましたが、軟膏塗布で治りました。
出血しなくても、創部の血行不全や不十分な安静が原因でキズが開いたり、皮膚が壊死したりする可能性があります。ほとんどは軟膏などの保存的治療で治ります。再手術を要することは極めてまれです。


⑤硬結(しこり)・拘縮(ひきつれ)

非常に稀な重度の拘縮(写真1)
同じ症例の2ヵ月後。(写真2)
軟膏とボールを毎日続けると速やかに改善しました。

剪除やクアドラカット特有の合併症としては、 その他、神経損傷や血管損傷など極めてまれな合併症の報告もあります。

しこり(硬結)、黒ずみ(色素沈着)、引きつれ(拘縮)などは比較的起こります。状態やご希望に応じて薬を処方します。通常数ヶ月かかって少しづつ良くなりますが、1~2年経っても残っていた場合はその後も改善しない可能性があります。

⑥薬

術後の硬結や拘縮は比較的よく起こります。特に拘縮は痩せていて皮下脂肪の少ない方ほど強く出る傾向にあります。これに対しては「ヒルドイド」というクリームを使います(保険診療可)。

当院オリジナルの治療法として、おもちゃのボールを用いた圧迫療法も効果があります。抜糸が済んだ頃から、毎日30分~2時間わきにボールをはさむだけで硬結や拘縮が早く改善します。自宅で本を読んでるときやテレビを見ながら、などリラックスしている時間を利用すれば苦にならないかと思います。

術直後より2~4週間後に最も強くなります。2ヶ月後ころより軽快していき、半年~1年でほぼなくなります。1年以上経っても残っていた場合はそれ以上改善しないかもしれませんが拘縮が後遺症と残ることは極めて稀です。

色素沈着はなかなか改善しないのが現状です。日焼けしやすい肌質で、浅黒い肌の方は色素や傷跡が残りやすくなります。ビタミンC内服(保険可)、もしくは、ハイドロキノン製剤やトレチノインの外用で対処します(保険外)。体質によることが多いためクアドラカットでも保証対象外とさせていただきます。

⑦ケロイド

これは手術になります。

⑧知覚異常(痛み、しびれ、鈍麻)

通常手術した部分はしばらく感覚が鈍くなります。数ヶ月かけて回復してきます。患者様によっては上腕(二の腕)から手首にかけてしびれや引きつれなどを感じる方もいますが、これも通常数週間で回復します。
これら合併症は、手術手技の問題というより、患者さま自身の安静、体質、セルフケアなどによっても経過が変わります。

⑨汗の質の変化

他覚的にはわからないのですが、「以前よりも濃い汗になった」、「違うにおいがする」という患者さまがまれにいます。

⑩毛穴のつまり(粉瘤)

数ヶ月してから起こる可能性があります。早めに圧出などの処置をすると治ることもありますが、放置すると徐々に大きくなり手術が必要になります。さらに放置すると化膿して膿瘍を作ることもあります。これは汗腺をきちんと取れば取るほどできやすくなります。私見ですが、汗腺を切除するときに脂腺を傷つけないようにすれば粉瘤を作りにくくなると思いますが、テクニック的には難しいです。

⑪術後臭

ごく稀に「手術前と違うにおいがする」と言われる方がいます。

⑫再発・再生

  よく「再発」についてご質問を受けます。他院で再発と言われたという患者さまが来られますが、きちんと切除されていれば理論的に再発はほとんどないと考えます。剥離だけすると、一時的に神経支配が途絶えたり、腺管が寸断されたためににおいが減って手術成功となりますが、数週間で神経支配が復活したり、腺管が回復したりすると再びアポクリン腺は活動しだします。

ですから、手術直後すごくよくても徐々に戻ってくるようなことがあれば、それは「再発」ではなく、「取り方が甘かった」ということになるかと思います。

その場合の再手術も可能ですのでご相談下さい。

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