小陰唇labium minus は大陰唇の内側にある、ひだ状の皮膚です。
大陰唇の後端は後陰唇交連となり、小陰唇の後端は陰唇小帯という横走のひだとなり、左右の小陰唇が連なっています。
小陰唇の前端では内外2葉に分かれ外側葉は陰核亀頭を被い陰核包皮となります。
また、内側葉は陰核の後面について陰核小帯となります。膣前庭は左右の小陰唇の間にある裂隙で、外尿道口、膣口、大前庭腺(バルトリン腺)の導管が開いています。
性的興奮によって、導管より粘液が分泌され、膣前庭を潤します。
大陰唇、小陰唇は外腸骨動脈から発生する外陰部動脈の枝である前陰唇枝と、内腸骨動脈から発生する会陰動脈の枝である後陰唇枝より栄養される血流の豊富な組織です。
大陰唇、小陰唇は前陰唇神経、後陰唇神経により支配されています。
また、陰核は陰核背神経により支配され、自律神経線維を含むため、副交感作用により海綿体の動脈を拡張させます。(図1)
男性経験がおおいと肥大し、黒ずみが強くなると一般的にいわれておりますが、迷信です。
一般的には先天的といわれますが、思春期や妊娠をさかいに大きくなったと訴える方が多いことから、ホルモンとの関係もとりざたされています。
また、慢性的な炎症が起因するとも、加齢によるものともいわれております。しかしながら、肥大するあきらかな原因はわかってはおりません。
では、いったいどのくらいの幅から肥大というのでしょうか?これは厳密な計測の報告はされておりませんが、膣口から小陰唇のもっとも外側までの距離が約2cm程度の幅が一般的なおおきさといわれております。
以下に小陰唇肥大のクラス分類をしめします。
クラスⅠ | 幅2cm以下 |
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クラスⅡ | 幅2~3.5cm |
クラスⅢ | 幅3.5~5cm |
クラスⅣ | 幅5cm以上 |
海外の文献では5cm以上を小陰唇肥大と定義しているものもありますが、いまだに国際的なコンセンサスは得られておりません。
また、欧米人と日本人ではあきらかな体格の差があり、一概にはいえないと考えております。
当院では、幅2cm以上を肥大とし、2cm程度でも辺縁の黒ずみを取りたい方、また整容的な改善を希望される方、自転車などで擦れて痛い、タイトなズボンなどが痛くて履けない、座った時に違和感を感じる方、性行為時に肥大によって痛みを生じる、恥垢がたまり悪臭がするなどの方を手術の適応としております。
解剖にあるように小陰唇は立体的な構造になっております。
ですから、まぶたの手術のように平面を対象とした手術ではありません。
全体を小さくするためには全周にわたって余剰な部分を立体的に切除する必要があります。
具体的にいいますと、陰核包皮、陰核脚に向かう部分、小陰唇を美しく、生理的な形にする必要があります。
クラスⅢ以下:(場合によってはクラスⅣでも可能)のデザインの基本は(図2)のようになります。
また、手術のときに切除する層のおおまかな目安としてはクラスⅡ以下で、上皮層のみの切除、クラスⅢ以上では一部筋層をふくめた全層での切除をおこないます。またクラスⅣの症例によっては、非常に下垂がつよい状態も見受けられます。
その場合は小陰唇に皮弁を作成し、くさび状に切除を行うこともあります。
(図3)皮弁法では、小陰唇内部を3層に剥離しそれぞれに中縫いをする必要があります。
局所的に黒ずみの部分だけ切除することも可能ですが(部分切除)
急峻な彎曲を描く小陰唇の場合は、理論的にドックイヤー(犬の耳)といわれる膨らみが形成されてしまいます。
(できるたけドックイヤーができないように工夫して切除しておりますが)
これは余剰部分を切除するとどうしても縫合の始まりと終わりに膨らみが生じてしまいます。(図4)
したがって、ご予算の都合もあるでしょうが、より生理的な美しさを求める場合は全周を切除していく全周切除をお勧めします。 「→図2」
実際の小陰唇手術手順を御説明します。
まず十分に消毒した後にデザインを行います。
このデザインが、最初のポイントです。
なんでもとってしまえばよいのでしょうか?
それでは、欠損となり、生理的な形態から逸脱してしまいます。
過剰な切除は外観上の違和感を引き起こすだけではなく、おしっこが周りに飛び散るなどの機能的な損傷をもおこしかねません。
よって、外尿道口から最低でも1.8~2cmの小陰唇は残し余剰な部分を切除するようにデザインを行います。
次に局所麻酔をおこないます、麻酔薬の注入により、小陰唇の組織が柔らかいためさらに肥大しますが、デザインのライン上をメスにて慎重になぞります。
その後丁寧に止血をおこないない余剰部分を切除します。
さてここから縫合となりますが、ここに次のポイントがあります。
それは手を抜かずひたすら丁寧に縫いこむということです。
ここには、形成外科ならではの技があります。
われわれ形成外科医は傷を縫合する場合中縫い(真皮縫合)という特殊な縫合を行います(図5)。
当院ではモノフィラメントの吸収糸を用いて中縫いをおこなったのち、ナイロン糸にで、表縫合、つまり仕上げ縫いを行います(図6)。
中縫いをおこなうことによって創縁での傷が開こうとするテンションを軽減し、創縁ぎりぎりの細かい縫合が可能となります。
(小陰唇の皮膚はうすく、粘膜はもろいため縫合針によって裂けないぎりぎりの部分に糸をかけます)
ちまたでは溶ける糸で縫っているので抜糸の必要がないというクリニックもありますが、やはりナイロン糸で縫合した方が明らかに美しい仕上がりとなります。
その理由として
手術前 | 手術7日前までに血液検査を行います。また可能であれば手術前日に剃毛をしていただきます。 |
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手術当日 | 約2時間~2時間30分程度、手術に時間を要します。 手術当日は自宅で入院するようなつもりで安静にしていてください、また当日はきついズボンなどを履かず、擦れないようにしてください。 |
術後1日目 | 翌日、血腫、感染、傷の離開の有無を確認いたします。 |
術後2日目 | シャワー浴が可能です。お風呂での入浴は抜糸まで控えてください。 |
術後7日目 | 傷の状態をチェックいたします。 |
術後14日目 | ナイロン糸を抜糸いたします。 |
術後数ヶ月 | 傷の仕上がりをチェックいたします。 ※約2週間程度はおもに糸による不快感(違和感)を感じることがあります、また約4週間程度は腫れが残ります。 |
手術後のアフターケアや注意点について
自転車の乗車、マラソン、ランニングなどの陰部が擦れるような激しい運動。タイトなジーパンをはいて長距離の歩行、性交渉などは約1ヶ月控えてください。
柔らかい組織のため傷が開く可能性があります。
小陰唇は柔らかく、血流が豊富なためちょっとしたことで大出血を引き起こすことがあります。
また圧迫止血が困難なため、術後患者さまのアフターケアが重要となります。
手術当日は特に安静が必要です
組織が柔らかいため、約1ヶ月程度腫れがのこります。
手術翌日のチェックが問題なければ、手術翌日よりシャワー浴が可能となります。
よく泡だてた石鹸で創部をそーっとやさしく洗うことで感染がある程度抑制できます。
また、術後より抗生剤を内服していただきます。
無茶をすると手術時の傷がひらきます。
いくら丁寧に縫いこんでも開いてしまっては傷がきれいになりません。
完全に癒合するまで、手術後1ヶ月程度かかります。
まずは1ヶ月運動をひかえてください。
術前の状態から、人間なのでかならず左右差があります。
術後左右差ができるだけ生じないように努めますが、生じてしまった場合後日修正も可能です。
ケロイド体質などによって瘢痕が目立つ場合もあります。
その場合はケロイドに対する加療をおこないます。
また縫合しているためやはり、よくみると若干のキズアト、もしくは凹凸を認めることがあります。
手術後創部に違和感を感じることがあります。
癒合の過程で創縁の線維が増加し、一時的に傷が硬くなることや、切除することで皮膚側にむかう目に見えないほどの細かい神経が切除されることによると考えられておりますが、数カ月で軽減していきます。
感染、血腫などにより、引きおこされることがあります。
また皮弁法では皮弁の先端が、喫煙などに起因する血流不全により一部壊死をひきおこすこともあります。
部分切除(片側) | 110,000円(税込) |
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部分切除(両側) | 220,000円(税込) |
全周切除(通常範囲) | 352,000円(税込) |
全周切除 (広範囲) | 418,000円(税込) |
会陰肛門形成加算 | 110,000円(税込) |