抄録集と抄録内容です。
方法です。仰臥位にて120度上腕を外転し、計測しました。計測部位は有毛部を中心に、毛孔の目立つ部分を手術範囲としています。その後、横軸、縦軸の長さを計測しました。
結果です。107症例を計測しました。BMI(肥満度)は16.0~40.8で、平均は21.3でした。理想BMI(肥満度)は22.0といわれているため、やや痩せぎみの方のデータがおおく採取されました。
ガーゼテストの結果です。伊藤の分類に基づいて計測しています。レベル4が最も多く、初診時制汗剤、香水などの着用にてにおいが判定できない方が数名しましたが、いずれも手術前に腋臭を確認し、軟耳垢、家族内発症をみとめました。
男性の手術範囲の結果です。手術範囲の平均は横軸(上腕の長軸方向)が101.5mmで、縦軸(上腕の長軸方向に直交する方向)が59.7mmでした。利き腕による左右差はありませんでした。
女性の手術範囲の結果です。手術範囲の平均は横軸(上腕の長軸方向)が89.95mmで、縦軸(上腕の長軸方向に直交する方向)が54.25mmでした。利き腕による左右差はありませんでした。
手術範囲を楕円形と仮定し、長半径×短半径×πにて計算しました。術前のガーゼテスト(腋臭の臭いの強さ)と手術範囲の相関係数は0.0で、相関はありませんでした。つまり臭いの強さと手術範囲は関係がありませんでした。
手術範囲とBMIとの相関を調べました。相関係数は0.4でした。まずまずの相関をみとめ、BMIがおおきいほど、つまり肥満度が増すほど、手術面積が広くなる傾向にあることがわかりました。
術後の結果です。術後3ヶ月以降も通院可能であった患者さんは、男性で57%、女性では68%でした。(術後通院日数は男性が平均112日、女性は137日でした)
その中での満足度は(VASテストをもちいました)男性は臭いが90%、汗は88%。女性は臭いが87%、汗が81%改善したとの結果でした。(3ヶ月以上通院できなかった患者さんのデータはとれませんでした。)
考察です。世界中から腋臭症手術に関する主だった論文を渉猟したところ(主に信頼性の高い形成外科雑誌より抽出しました)明確な手術範囲を記載した論文はありませんでした。しかし1998年、本邦成書に手術範囲はおおよそ4×10cm程度でよいとするという具体的な数値が記載された文献がありました(どの程度上腕を外転するのかという記載はありませんでした)。この大きさを1つの基準とすると、当院で行っている施術は縦軸を基準より長めにとり、また横軸も十分な長さを手術範囲としていると考えられました。
以前より都内数か所のクリニックにて意図的に極小範囲のみの剪除法の施術(保険加療)をおこなっている医院が見受けられました。(保険のためできるだけ短時間で多くの施術をするためと推察されました)。500円玉程度の範囲のみしか行わないクリニックも散見されました。
学会発表した方法に基づくと、当院での施術範囲は他の論文から鑑みても必要十分な範囲であると考えられました。
他院で小範囲しか施術されなかった症例。