上眼瞼(まぶた)は眼瞼挙筋(動眼神経支配)とミュラー筋(交感神経支配。補助的に働く)の2つの筋肉が縮むことで上がります。眼瞼挙筋は途中から挙筋腱膜という組織になって瞼板という上まぶたの軟骨に付いています。つまり眼瞼挙筋は腱膜を介して瞼板を持ち上げ、目を開けています。顔を正面に向けた時、上まぶたが瞳孔(黒目)の上まで上げられない状態を眼瞼下垂と診断します。実際は、額の筋肉(前頭筋)を使って眉毛を上げたり、顔を傾けたりして視野を確保しているために見逃されている患者さまが多くいます。
※上記以外にもまれな原因が多くあります。分類方法は諸家によって異なります。
1. 老人性眼瞼下垂。加齢に伴って挙筋腱膜が薄くなり、腱板から離れてしまうもの。特に白内障など眼科手術の後に起こることが多いといわれています。
術前。高度な眼瞼下垂を認める。 | |
術後1週間。皮下出血と腫れを残しているものの著明な改善を認める。 | |
術後1ヶ月。腫れも出血斑も引いている。 |
2. 機械的眼瞼下垂。コンタクトレンズ、特にハードの長期装用による慢性刺激が原因といわれています。アトピーや花粉症で目をよく擦ることが原因なることもあります。
術前。中~高度な眼瞼下垂。 | |
術後2ヶ月。著明に改善してい | |
閉眼時。キズは二重の線に一致。 |
※1.2などは「腱膜性眼瞼下垂」といわれることもあります。
3. 麻痺性眼瞼下垂の一部。顔面神経麻痺によるものは額のたるんだ皮膚を切除し骨膜に固定する方法(静的再建術)を行います。
4. 外傷性眼瞼下垂。症状により対処法が異なります。
5. 偽下垂。加齢に伴う皮膚のたるみによるもの。後述する病的症状のないものは保険外診療となります。
たるみによる偽の眼瞼下垂 |
※小児の先天性眼瞼下垂など、より高度な治療が必要な眼瞼下垂については大学病院などに紹介させていただきます。
まず問診などから原因を知ります。その上で必要に応じて検査を行い手術可能かどうか判断、可能ならばどの手術法が最適かをお話しします。始めに正面を向いた状態で下垂度を測ります。
正常: 3.5~4.0mm | |
軽度: 1.5mm | |
中等度: 0.5mm | |
高度: -0.5mm |
額の筋肉(前頭筋)を指で抑えて目を開けていただきます。下を向いたときと上を向いたときの高さを測り挙筋機能を評価します。
眼瞼挙筋が少しでも(5mm以上)機能しているようなら挙筋短縮術を検討します。先天性は挙筋機能が不良なことが多いため太ももなどからの筋膜移植による吊り上げを検討します。
交感神経刺激薬を点眼して、瞼を上げる筋肉の1つであるミューラー筋の機能を調べることもあります。点眼20分後に2mm以上の改善が認められれば、経結膜的ミューラー筋短縮術(後述)を検討します。
準備: 当日は化粧(アイメイク)しないでお越し下さい。術後1日ガーゼを当てます。ガーゼや腫れを隠すためのサングラスをご持参下さい。
上眼瞼に局所麻酔の注射をし、麻酔の点眼もします。
上眼瞼の皮膚を横に切開します。
※皮膚にタルミがある場合は、2~5ミリ程度の幅で皮膚を切除します。
眼輪筋を一部切除して、瞼板と挙筋腱膜を露出させます。
瞼板と挙筋腱膜を、細いナイロン糸で数か所縫合します(前転法、タッキング)。
起き上がっていただき、瞼の上がり方を確認します(何度か繰り返すこともあります)
皮膚を縫合して軟膏を塗布、小さなガーゼを当てて手術は終了です。
術前 | |
術後 1ケ月 |
上眼瞼に局所麻酔の注射をし、麻酔の点眼もします。
ミューラー筋の機能が保たれている場合、結膜(瞼の裏側)から筋肉を短縮します。とける糸を使うため抜糸は不要です。外側にはキズがつきません。
上眼瞼から眉毛にかけて局所麻酔の注射をし、麻酔の点眼もします。また、筋膜採取部(通常は太ももの外側)にも局所麻酔をします。
二重の線に沿って皮膚を切開し、腱板を露出させます。
太ももの皮膚を切開し大腿筋膜を3×5cm程度採取します。
筋膜を適度な大きさにカットし、腱板に縫い付けます。
瞼と眉毛の皮下を剥離し、筋膜を通し、瞼を吊り上げます。適度な位置で固定します。
術後に内服薬(抗生物質、腫れ止め、痛み止めなどご希望に応じて)と軟膏(抗生物質)を処方します。入浴は当日より可能です。化粧も翌日から可能ですがアイメイクだけは抜糸まで避けて下さい。コンタクトレンズも1週間は装用を禁止します。
△2日以内の診察。
出血、腫れなどをチェックしますが、必須ではありません。問題なさそうなら自宅安静でも結構です。
◎抜糸 5~7日後に行います。
○腫れが引いて安定するまでの間、必要に応じて経過観察させていただきます。
一般的な術後合併症・・・出血。感染(化膿)。痛みなど。
※修正(再手術)について
過度の後戻り、矯正不十分、顕著な左右差や糸トラブルなどのために再手術になることがあります。
※初診後すぐ手術も可能です.その際にはご予約時に必ずその旨をお申し付けください.